鍛金
金・銀・銅・鉄などの金属、またはそれらの合金の展性と延性を利用して、これを打ち延ばしたり縮めたりして茶器類・花器類・酒器類をはじめ、様々な工芸品・生活用品を作る技術を鍛金という。金属加工の技術を歴史的に見た場合、仏教美術との関連が深いものが多いが、白鳳地代に多く作られた「押出仏」は、薄い銅版を型に当てて叩いて仏像の形を浮き出させたもので、これなどは、かなり早い時期の鍛金技法を言える。工芸品位おける金属の加工法は大別すると鋳金・彫金・鍛金の3つに分けられるが、鍛金という言葉自体は比較的新しいもので、これ以前には「鎚金師(ついきんし)」「鎚起師(ついきし)」あるいは「打物師」と呼ばれる職業があり、このあたりが、金属を叩いて造形する作業に従事していたと考えられる。
鍛金で使用する道具のうちで最も重要なものは、鎚(つち)類である。金鎚と木鎚に分けられ、金鎚には「締め鎚」「均し(ならし)鎚」「ひら鎚」「芋鎚」など、木鎚にも「張出鎚」「撞木(しゅもく)鎚」「かけや鎚」など多数の鎚があり、これら合わせて約350本ほどが常に仕事場の壁にかけてあると言われる。次に重要なのが「あて金」である。これは、鎚で叩く時、金属をはさんで反対側(裏側)にあって、鎚で打つ力を受け止めるもので、作品の各部分の形や大きさに応じて使い分けるため、これまた金鎚と同じ位の数が必要とされる。このあて金を固定するのには「はちのす」と呼ばれる、重さ30kg〜40kgの鉄のかたまりが用いられる。これには色々な形・大きさの穴が開いており、ここにあて金を差し込んで固定する。この他にも、最初に金属板から切り出すための金切ばさみや、その切り出された金属板をまず初めに叩くのに用いる、欅(けやき)の木でできた「あて台」、大奥のヤスリ類や、焼鈍し(やきなまし)・酸洗いの設備など、製作に要する道具が非常に多種多様であることも鍛金の特色である。金属の持つ独特の美しさと魅力を最大限に引き出し、使う人に喜んでもらえる作品にするために、これらの道具と技術を駆使して、職人たちは仕事を続けているのである。
鍛金の技法による作品
写真右上は、純銀製あられ打出茶釜である。あられとは表面にある小さい突起のことで、このあられの形や大きさを合わせたたがね(お型とめ型)を作り、1つ1つ打ち出していく。1枚の銀板から本体を絞り上げ、あられを打ち出し、完成するのに約1ヶ月を要する。右下は、やはりひしあられを施した銅製のやかん(製作日数約5日)。左は純銀製亀甲打出花器である。亀甲の形のたがねを作って打ち出したもので、手の部分は小枝の芽吹きを表現している(製作日数約12日)。